Story

癒しの音を求めて

―RAVVast(スリットドラム)との出会い―

RAVVast(スリットドラム)との出会いは、自身の大きな病気がきっかけでした。
髄膜炎を発症し、炎症が脳まで広がったことで「髄膜脳炎」という重い状態になり、長期間の入院生活を余儀なくされたのです。

脳に炎症が及ぶため、ろれつが回らなくなり、意識が薄れ、歩くことも難しくなりました。幻覚を見ることもあり、命に関わる状況でした。最終的には新しい薬の点滴によって回復へ向かいましたが、長い闘病生活となりました。

病気そのものは治っても、今度は大量に使用したステロイドの副作用や、長期間体を動かしていなかったことによる体力低下との戦いが続きます。リハビリを含め、完全に回復するまでには半年ほどかかりました。

その間、心の中にあったのは「自分を癒したい」という思いでした。

五感で癒されたい。
美味しいものを食べれば味覚は満たされるし、美しい自然の中に行けば視覚も癒される。
しかし聴覚はどうだろうか。

音楽を聴くのもいいけれど、できれば自分自身で音を奏で、その音を聴いて癒されたい。そんな思いから、「癒しの楽器」をインターネットで探し始めました。

そこで出会ったのがRAVVastでした。

癒しの音色があり、持ち運びができて、誰でも簡単に叩いて音を出せる。まさに求めていた条件に合う楽器でした。

初めて鳴った音

実際に購入し、届いたときのことは今でも覚えています。

動画では、叩けばすぐ音が鳴るように見えていました。
ところが実際に叩いてみると、最初はまったく音が出ません。

「おかしいな」と思いながら、30分ほど集中して叩き続けていると、少しずつ音が出るようになりました。

そして、ようやく響いたその音。

「これだ。自分が求めていた音だ。」

そう感じた瞬間から、夢中になりました。

最初は自宅で30分、1時間と練習を続けました。しかし、楽器を注文して届くまでの2か月の間、ずっと心に決めていたことがありました。

それは
「必ず自然の中で演奏する」
ということでした。

自然の中での演奏

楽器を手にして数日後には、山へ向かいました。

もともと自然の中で癒されたいという思いがありました。そこに音が加われば、きっとさらに心地よい時間になるのではないか。そんな直感があったのです。

自然にはすでに多くの音があります。
鳥のさえずり、風の音、川のせせらぎ。

そこに楽器の音を持ち込むことに違和感があるのではないか、と問われることもあります。しかし、インターネットでその音色を聞いたとき、自然の音と調和するはずだという確信がありました。

実際に自然の中で奏でてみると、その予感は的中しました。

音は波紋のように広がり、やがて自然の音の中へ溶け込んでいく。
その音の中に、自分自身も溶け込んでいくような感覚がありました。

まさに自然との一体感でした。

当時は曲を作ろうという意識もなく、ただ思うままに叩いていました。
RAVVastは9つの音階が整えられているため、どこを叩いても不思議と調和した音が出ます。初心者でも気持ちの良い音が鳴る楽器なのです。

自然の中で適当に音を鳴らすと、鳥が鳴き始め、風が吹く。
まるで自然とセッションをしているような感覚でした。

癒される側から、届ける側へ

当初の目的は、あくまで「自分を癒すこと」でした。
しかし、やがてその思いに変化が生まれます。

自分が癒されていくにつれて、

「この気持ちよさを、誰かにも届けたい」

そう思うようになったのです。

SNSに動画を投稿したり、YouTubeに演奏を載せたりしていると、「これは何の楽器ですか」「ぜひ演奏してほしい」と声をかけられるようになりました。

そこから、人前で演奏する機会も少しずつ増えていきました。

ただし、演奏する場所には気を配っています。
騒がしい環境ではなく、落ち着いて音を聴ける場所。
リラックスした状態で癒しを感じられる空間。

それが、この音色を届けるうえで大切だと感じているからです。

旭川への想い

これまでにアルバムを4枚制作しました。
最初の作品は販売目的ではなく、親友と一緒に作った曲が増えたため「記念として形に残そう」という思いで作ったものでした。

ところが、その作品を聴いた人たちが次の作品を楽しみにしてくれるようになり、作品を重ねるごとに応援してくれる人が増えていきました。

4枚目のアルバムでは、旭川の大雪山をモチーフにした楽曲が生まれました。

この曲を制作する中で、ある思いが芽生えます。

「旭川の曲なら、旭川の若い世代と一緒に演奏したい。」

そう考え、高校の合唱部の先生に連絡を取り、高校生とのコラボレーションが実現しました。

高校生たちには、この活動を通して、旭川の自然の素晴らしさを感じてほしいと思っています。

自分自身、高校生の頃には大雪山を見ても「きれいだな」と感じる余裕はありませんでした。
だからこそ、今の若い世代には早い段階で気づいてほしい。

「自分はこんな素晴らしい場所で育ったんだ」

そんな誇りを感じてほしいのです。

癒しの波紋

スリットドラムの音色は、瞑想にも使われるような穏やかな響きを持っています。

忙しい日常の中で、少し立ち止まり、自分と向き合う時間を持つ。
心が落ち着けば、人は周りの人にも優しくなれる。

そんな時間を生み出す音でありたいと思っています。

今後は高校生だけでなく、旭川の合唱団ともこの楽曲を共有し、地域の人たちと一緒に歌い、奏でていきたいと考えています。

旭川の人たちと一緒に音楽を作り、その癒しを波紋のように広げていく。
それが今の目標です。

そして、もっと大きな目標を言うならば、最終的には世界平和です。

もちろん簡単に実現できるものではありません。
しかし、一人の心が癒され、その人が周りの人に優しくなり、その優しさが広がっていく。

その小さな波紋が重なっていけば、やがて世界は少しずつ平和に近づいていくのではないか。

自分ができるのは、その最初の一滴を落とすこと。
その思いを込めて、今日も音を奏でています。

SAYO